ポップ音楽ファンとしての個人的な歴史を100曲で振り返るシリーズPart.3

41. Sowing The Seeds Of Love/Tears For Fears (1989)

「ザ・ハーティング」「シャウト」と比べるとそれほど評価されていないような気がするし、その理由もなんとなく分かるのだが、個人的には「シーズ・オブ・ラヴ」のアルバムが大好きである。中期ビートルズ的な感じを分かりやく薄め、80年代的ダイナミズムでブーストしたような表題曲にも抗い難い魅力を感じずにはいられない。ローソン調布柴崎店での深夜バイト中に店内放送でよく流れていた。

42. All Around The World/Lisa Stansfield (1989)

ポップ・ミュージック界の最新トレンドを絶妙に取り入れた上で大衆化してヒットさせるタイプの曲が本当に好きで、これは日本におけるディスコ歌謡だとかハウス歌謡だとかにもいえることなのだろう。ハウス・ミュージックやグラウンド・ビートなどと呼ばれる音楽が流行っていた80年代末でいうと、この曲などが典型例だろうか。

43. Nothing Compares 2 U/Sinead O’Connor (1990)

この曲には当時「愛の哀しみ」という邦題がついていて、収録アルバムは「蒼い囁き」だった。プリンスが作詞・作曲した痛切な失恋バラード。顔のクローズアップだけがずっと映されていて、歌っている途中で涙がこぼれるミュージックビデオも印象的だった。

44. Haircut 100/バスルームで髪を切る100の方法/フリッパーズ・ギター (1990)

この並びで聴くと確かにこういった時期にこの音楽と出会ったのだな、というような記憶が甦ってくる。日本語のポップスとして完全に新しく、まさか可能だとは予想だにしていなかった領域を突破すらしている。これはやはり革命だったのだと感じずにはいられないし、曲の終わりにセックス・ピストルズ「アナーキー・イン・ザ・U.K.」にも似たスピリットを感じるのもけして偶然ではないような気がする。

45. Vogue/Madonna (1990)

マドンナが今日のポップ・ミュージックやカルチャーにあたえた影響について考えはじめるときりがないのだが、音楽的にはハウス・ミュージックをそれほど薄めずにメインストリームのポップソングに取り入れ、ゲイ・コミュニティのアンダーグラウンドなサブ・カルチャーを取り上げている辺りにもシビれるというもの。

46. Groove Is In The Heart/Deee-Lite (1990)

カラフルでキャッチーでコスモポリタンなダンス・ミュージック。エンディングが「蒲焼きやわらかいっすね」と言っているようにも聴こえる(ビデオではそうは聴こえない)。

47. Kinky Afro/Happy Mondays (1990)

インディー・ロックがクラブ・ミュージックと結びついた音楽がイギリスのマンチェスターを中心に盛り上がり、マッドチェスターとかおマンチェとか呼ばれていたわけだが、グルーヴ感が感じられロック的な要素も強かったハッピー・マンデーズ「ピルズ・ン・スリルズ・アンド・ベリーエイクス」は特に分かりやすくてとても良かった。六本木WAVEで大量陳列されてもいたので、とても買いやすかった記憶がある。

48. Being Boring/Pet Shop Boys (1990)

ペット・ショップ・ボーイズはユーロビートでヒューヒュー言っているタイプの人々にもなかなか人気があった訳だが、この曲の切なげな感じはすぐに好きになった。確かJ-WAVEの「TOKIO HOT 100」でかかっているのを聴いて、好きになったのだったと思う。

49. Heaven Knows I’m Miserable Now/The Smiths (1984)

ザ・スミスはバンドがまだ存在していた頃から好きで、レコードも買っていたのだが、解散してからしばらく経った後にアメリカ盤のコンピレーション・アルバム「ラウダー・ザン・ボムズ」のCDを買って、個人的なブームが再燃したりもした。この曲などはネオアコ的ともいえる爽やかなサウンドにのせて、いかに働くのが嫌かということを歌っていて最高である。

50. Nothing Can Stop Us/Saint Etienne (1991)

「BEAT UK」のインディー・チャートのコーナーでミュージックビデオの一部を視聴して、これはかなり良いと思い、その日のうちに六本木WAVEでCDシングルを買った。60年代のピュアなポップ感覚を90年代のテクノロジーとエディット感覚でアップデートしたかのような、素敵な音楽。収録アルバム「フォックスベース・アルファ」も最高。

51. Get The Message/Electronic (1991)

セイント・エティエンヌ「ナッシング・キャン・ストップ・アス」を知ったのと同じ回の「BEAT UK」でビデオを視聴してこれもまたすぐに好きになった曲。ニュー・オーダーのバーナード・サムナーと元ザ・スミスのジョニー・マーによるスーパーユニットという評判はさておき、これにもまたピュアなポップ感覚をアップデートした系の良さを感じた。

52. Higher Than The Sun/Primal Scream (1991)

インディー・ロック・バンドのプライマル・スクリームはダンス・ビートを取り入れた素晴らしいシングルをいくつかリリースしていたが、アンビエント・テクノのジ・オーブとコラボレートしたこの曲には、ポップ・ミュージックの可能性を拡張したのではないかと思わせるほどの革新性もあった。

53. Smells Like Teen Spirit/Nirvana (1991)

アメリカのラウドでヘヴィーなオルタナティヴ・ロックは少しずつ盛り上がってきている感じはあったが、あくまでアンダーグラウンド的なシーンに限ってのことだと思えた。それが一気にメインストリームに影響をあたえ、ポップ・ミュージックの様子を永久に変えてしまったのがニルヴァーナの「ネヴァーマインド」だった。これこそがまさに時代を変える音だったのではないか、というような気がするのである。

54. The Concept/Teenage Fanclub (1991)

サウンド的に特に新しく斬新な訳ではなく、基本的にはドラムス、ベース、ギター、ボーカルのロックバンド編成によるものなのだが、重要なのは表面的な新しさだけでは必ずしもなくて、作品として優れているかどうかなのだ、ということを感じさせてくれたのが、ティーンエイジ・ファンクラブの「バンドワゴネスク」。特にこの曲などは、表面的には懐古趣味的に思えるようなところが実は逆に新しいのではないか、と思わせるような素晴らしさだった。

55. The Drowners/Suede (1992)

マッドチェスターもグランジロックも等身大的なところが受けているようなところがあったが、ステージやメディアにおけるグラマラスなスター性であったり、セクシュアルな魅力を復権させたのがスウェードだったのではないだろうか。しかも、というか実はこれが最も重要なのだが、楽曲のクオリティーもひじょうに高い。プレス枚数が少なかったのか、西新宿のラフトレードショップで12インチ・シングルを購入できるまで、少し時間がかかったことが思い出される。

56. Motorcycle Emptiness/Manic Street Preachers (1992)

当初はハッタリをかましているだけのいかがわしいバンドなのではないかと誤解していたのだが、この哀愁に溢れたオルタナティヴ・ロックにして、インテリジェンスを感じさせもする批評のような曲で認識が一気に変わった。渋谷や横浜などで撮影されたと思われるミュージックビデオもとても良い。

57. Babies/Pulp (1992)

70年代から活動していたカルト的なインディー・バンド、パルプもブリットポップブームでやっとブレイクするのだが、そのきっかけとなった曲でもある。ストーリー仕立てのセックスを感じさせる歌詞を、スター性のあるジャーヴィス・コッカーがくねくね動きながら歌う。これが数年後には、メインストリームのド真ん中に進出するのだから痛快であった。

58. Creep/Radiohead (1992)

「NME」のレヴューだけを頼りに西新宿のラフトレードショップで買ったところ、これが大当たり。当時は無名の新人バンドだったレディオヘッドのこの曲は、ラウドとクワイエットの落差を生かしたサウンド、自虐性がアンセミックな域にまで達した表現力が卓越して、こういうのこそがちゃんと売れると良いのだが、と思っていたらちゃんと売れたので本当に良かった。

59. Rudderless/The Lemonheads (1992)

ロックバンド編成のポップ・ミュージックとしては、オーソドックスな感じもあるのだが、クオリティーは明らかに高いアルバム「イッツ・ア・シェイム・アバウト・レイ」からの1曲。「Waiting for somethin’ to break」という歌い出しのフレーズは、当時の私の心境にうまくフィットしたのみならず、とにかくとても良い曲であった。

60. For Tomorrow/Blur (1993)

マッドチェスターのフォロワー的登場の仕方をした印象があるブラーだが、この曲や収録アルバム「モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ」ではレトロ感覚の英国らしさをユーモアたっぷりに表現し、高い評価を得たようなところがある。このセンスはさらに拡張されていき、ブリットポップを代表するバンドの一つになっていった。

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