ダフト・パンクの思い出などについて。

先日、私がミンカパノピカとかサイバーニュウニュウとかマサ子さんのことを考えている間にダフト・パンクが解散を発表していたらしく、Twitterのタイムラインがそれについてのツイートでいっぱいになっていた。

少なくとも私のタイムラインの上においては、みんなダフト・パンクのことがこんなにも好きだったのだな、と思わされる眺めであった。

ダフト・パンクのことは1997年のはじめ、NMEに掲載されていたアルバム「ホームワーク」のレヴューで知ったような気がする。なんだか気になったので、おそらく買ったはずである。同じぐらいの時期にブラーの「ビートルバム」だとかペイヴメントの「ステレオ」だとかがリリースされていた。

それ以前のことについてはよく知らないのだが、以前はビーチ・ボーイズの曲名から取ったダーリンというバンドで活動していたらしく、ステレオラブのレーベルから作品を発表したりもしていたという。その時、「メロディー・メイカー」のライヴ評におそらく酷評するようなニュアンスで「daft punky thrash」などと書かれたことを逆手に取って、このユニット名になったようだ。

「ダ・ファンク」のシングルは1995年にリリースされていたようなのだが、その後、ヴァージンと契約して1997年に再リリースされた時に私は初めて知ったのだった。まったくの余談だが、明大前のビルの地下にカラオケの店があり、ボックスではなく小さなステージに上がり、知らない人達の前で歌うという当時は珍しくなかったシステムの店で、タンバリンを叩く店員のリズムがかつてはパンパンパンパンというようなものだったと思うのだが、ある時期からンパンパンパパパのように複雑化したとかそういう話はどうでもいいのだが、そこが潰れた後、クラブのようなものになっていてその店名が確か「ダ・ファンク」であった。こんな場所で大丈夫なのだろうかという不安は的中したようで、数ヶ月も持たずに撤退もしくは業態変更し、その後は居酒屋になっていた。90年代半ばのことである。

アルバム「ホームワーク」の中でも「ダ・ファンク」は特にインパクトがあり、下北沢の駅の近くにあった方のレコファンで流していたのが外に漏れてきて、いまの時代の音だなと感じた記憶がある。ブラーが「ビートルバム」を出しているぐらいなので、ブリットポップの盛り上がりは次第に鎮静化しつつあって、アンダーワールドやケミカル・ブラザーズなど、テクノのジャンルから派生したビッグ・ビート呼ばれるジャンルが流行ったりしていた。これらの音楽はテクノではあったのだが、ブリットポップのリスナーからもひじょうに好まれていたような印象がある。アンダーワールドの「ボーン・スリッピー」がブリットポップ映画ともいえる「トレインスポッティング」に起用され大ヒットしたり、ケミカル・ブラザーズの作品にはオアシスのノエル・ギャラガーやザ・シャーラタンズのティム・バージェスがゲスト参加するなどしていた。

ダフト・パンクもそういうテクノとかビッグ・ビートの一派なのかと思い聴いてみたところかなり違っていて、これはフランスのアーティストだからなのか、などと感じたりもしていた。「ダ・パンク」はスパイク・ジョーンズが監督したというミュージックビデオも良くて、擬人化した犬が夜の街を歩くような内容であった。

続いて「ホームワーク」からは「アラウンド・ザ・ワールド」がリリースされるのだが、これは「BEAT UK」でビデオを観て、ボコーダーのような加工された声が用いられているのと、テクノポップみたいでなんか良いなと感じたのであった。ビデオでのロボット的な動きなどにも、とても良いものを感じた。

2000年にシングル「ワン・モア・タイム」がリリースされるのだが、これにはなんだか軽すぎやしないだろうかとか、なんとなく普通になったな、とかいうような感想をいだいたのだが、クラブでかなりヒットしていたらしい。当時、そういう所には一切行くことが無かったので、その辺りについてはまったく知らない。しかし、当時、身近にいた女子大学生が普通に「ワン・モア・タイム」のメロディーを口ずさんではいたので、なんとなく流行っているのだろうな、という気はしていたのだった。

翌年に「ワン・モア・タイム」を含むアルバム「ディスカヴァリー」がリリースされ、半ば義務的に購入した。当時、もうすでに海外のAmazonでCDを購入していて、CDショップに足を運ぶ頻度はもうすでにかなり減っていたはずである。そして、このアルバムがかなり良かった。テクノにおけるAORやフュージョン的アプローチというか、機能的には70年代のスティーリー・ダンなどに近いものがあるのではないか、と感じたりもした。とにかくこのアルバムにはとても良い曲がたくさん収録されていたのだが、個人的な興味としてはザ・ストロークスやホワイト・ストライプスといったロックンロール・リバイバル的なバンドに傾いてもいたため、それほど熱心に聴いたかというと実はそれほどでもなかったりはする。それでも、ダフト・パンクの最高傑作といえばこれなのではないかと思う。

2005年にはアルバム「ヒューマン・アフター・オール」がリリースされているのだが、これには賛否両論があったようだ。個人的には興味がちょっと別の方面にあったようで、このアルバムは買っていないし、熱心に聴いてもいなかったと思う。しかし、タイトルが表しているようにロック的な要素を取り入れた「ロボット・ロック」やなにやらとてもユニークで中毒性が高い「テクノロジック」など、なかなか面白いアルバムだったということが分かる。

この後、ライブアルバムや映画「トロン」のサウンドトラックなども経て、2013年にはオリジナルアルバムとしては8年ぶりとなる「ランダム・アクセス・メモリーズ」をリリースした。シックのナイル・ロジャーズやファレルなどもフィーチャーしたシングル「ゲット・ラッキー」がいろいろな国で大ヒットして、この年を代表する1曲になったような気がする。

2020年にデュア・リパがリリースし、大ヒットさせたアルバムのタイトルが「フューチャー・ノスタルジア」だが、たとえば70年代のディスコ・ポップの感じというか強度を今日的なテクノロジーやセンスにアップデートしたような音楽が一般大衆にウケている印象がある。「ゲット・ラッキー」にはもしかするとそれらの先駆的大ヒット曲だったのではないか、と感じられるところがある。

ダフト・パンクがリリースしたアルバムは「ランダム・アクセス・メモリーズ」が最後になったわけだが、その後にはザ・ウィークエンドとのコラボレーションによって、「スターボーイ」という素晴らしい楽曲をヒットさせてもいる。

そして、2021年に解散を発表したのだが、その方法というのもこのために特別に制作されたビデオを利用するなど、最後までオーディエンスを楽しませてくれた。その功績はけして色褪せることが無いような気がする。たとえば我々の時代におけるモータウンとかフィル・スペクターとかスティーリー・ダンとか、そのようなものでもあったような気がする。ありがとう、ダフト・パンク。同時代の音楽ファンでいられて、とても幸せだったことには間違いがない。

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