ペール・ウェーヴス「フー・アム・アイ?」について。

Pale Wavesなので発音的にはペイル・ウェイヴズなのではないかという気がするのだが、この英語のカタカナ表記にはいつも迷ってしまう訳で、「ミュージック・マガジン」の中村とうようはマイケル・ジャクソンのことをマイクル・ジャクスンと書いていたなとかそれはまあ良いのだが、日本公式サイトがペール・ウェーヴズとしているので、とりあえずそれでいってみたい。

ここ近年にイギリスで成功したインディー・ロック・バンドの代表格というような扱いであり、いまはウェブサイトのみとなってしまった「NME」でもわりと推されている印象がある。ところが私は実はずっとあまりピンと来ていなくて、よく分からなかったのだが、マンチェスター出身のインディー・ロック・バンドといってもジョイ・ディヴィジョン、ザ・スミス、ザ・ストーン・ローゼズ、オアシスなどとは随分違い、The 1975とは仲が良い、というかレーベルが同じでオープニングアクトも務めていた。

2018年にリリースされたデビュー・アルバム「マイ・マインド・メイクス・ノイジーズ」は全英アルバム・チャートで最高8位だったのだが、それ以来のアルバムとなるのが、今回の「フー・アム・アイ?」である。ロサンゼルスでレコーディングされていたのだが、新型コロナウィルスのパンデミックがあり、その後はリモートで何とか完成させたのだという。その前には、生死にかかわりかねない交通事故にも遭っていたという。

先行シングルの「チェンジ」を聴いた時点でもまあポップでキャッチーであり、どちらかというともうちょっとダークな、私がインディー・ロックに対して勝手に抱いているイメージとはかなり違って、そこがやはりいまひとつ入り込めないのかな、という印象を持っていた。ところが、このアルバムを繰り返しいるうちに、これまでこのバンドの音楽の聴き方を間違えていただけで、実はこれはかなり良いのではないかという気分になってきた。

まず、「フー・アム・アイ?」というアルバムタイトルだが、これには自分自身がまだ何者なのか分かってはいない、これぞ青春というか思春期的な感覚を覚える。実際のところ、ペール・ウェーヴスのフロントパーソン、ヘザー・バロン・グレイシーは現在、20代半ばであり、LGBTQであることを公表もしているのだが、これがたとえば今回のアルバム収録曲だと「シーズ・マイ・レリジョン」などに分かりやすい形であらわれている。マドンナやザ・キュアーなどにも影響を受けているという。

アヴリル・ラヴィーンやパラモア辺りが思い浮かんだのだが、とにかく軽快でポップな楽曲に乗せて、若者特有の心の痛みや不安感のようなものが歌われている。いまは良くしらないのだが、アヴリル・ラヴィーン辺りが新たな時代のニュースター然としていた場合、たとえば特に音楽マニアという訳でもない、普通の女子大学生だとかが日常生活を少しだけ豊かにするために聴いている洋楽のようなものがあって、それを思い出させなくもない。ちなみにいまどきは、それらがK-POPだったりボカロ以降の日本のポップスなのではないか、というような気はなんとなくしている。

そういったタイプの音楽なのだと思って聴くと、とてもクオリティーが高いことが分かるし、ぜひこれを好きになってどことなく健全な気分を味わいたくもなってくる。自分自身が一体、何者であるのかを理解したい、出来ることならしあわせになりたい、というような思いを誰もが、とまではいかないが、かつて抱いた人々はおそらく多いことかと思われる。そのようなイノセントでありながらも、実のところ日常は悩みばかりで、けして良いことずくめではなかった頃の気分を思い出させてもくれる音楽だとも感じる。

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