セレステ「ノット・ユア・ミューズ」について。

2021年1月最終週のポップ・ミュージック界の話題といえば、ロンドン出身のシンガー・ソングライター、アーロ・パークスのデビュー・アルバム「コラプスド・イン・サンビームズ」のリリースであろう。私が知る限りいまのところ大絶賛の嵐であり、「アーロ・パークスしか勝たん」状態といっても過言ではないような様相を呈している。私も個人的にかなり気に入っているのだが、これから聴き続けていくうちにさらにどんどん好きになっていくのではないか、という予感がしている。

しかし、この週にリリースされた優れたアルバムはこれだけではなく、個人的にはセレステの「ノット・ユア・ミューズ」もかなり気に入っている。セレステというアーティスト名は本名のセレステ・エピファニー・ウェイトから取られているが、女性の名前として使われる以外に青空や天空といった意味もあり、ゲームソフトのタイトルや日本では美容院のチェーン名、かつては三菱自動車の車名としても知られていたようである。

生まれはアメリカでイギリス育ち、オーセンティックなR&Bシンガーから影響を受けているという。昨年のブリット・アワードではライジング・スター賞を受賞、パフォーマンスも話題となり多くのメディアに取り上げられたりもした。今年のニュースター誕生のお膳立ては整ったかのように思われたが、新型コロナウィルスの影響により、思うようにはいかなかったようだ。

それで、やっとリリースされたのがこの「ノット・ユア・ミューズ」というアルバムだが、ブリット・アワードでパフォーマンスした「ストレンジ」をはじめ、その後にリリースしたシングルもすべて収録されている(私が昨年に観た映画の中でも特に気に入っているうちの一本、「シカゴ7裁判」のサウンドトラックに使われていた「ヒア・マイ・ヴォイス」は、デラックス・エディションにのみ収録されているようだ)。

昨年のブリット・アワードでのパフォーマンス映像を視聴してみたのだが、確かにこれは良い。ハスキーなボーカルに特徴があるが、都会的なサウンドと合わさることによってかなり良い感じになっている。

オーセンティックなソウル・ミュージックを現在のセンスで解釈しているという点ではエイミー・ワインハウス辺りを思い起こさせたり、ビリー・ホリデイやアレサ・フランクリンなどに通じるものを感じさせたりもする。

ボーカルは素晴らしいが曲が退屈というような評も見かけたが、個人的にはかなり気に入っている。

「ストレンジ」という曲で歌われているのは、ひとが他人から友達になって、友達から恋人になって、それから再び他人に戻っていくのは奇妙だと思わない?というようなことであり、新進気鋭のシンガーであるにもかかわらず、すでにクラシックスを歌っているかのような雰囲気すら感じられる。

一方でよりアップテンポでキャッチーな曲もあり、アルバム作品として適度に緩急もついていて満足度も高い。個人的な現在の気分にはジャストな感じではあるのだが、もう少し刺激や冒険しているところが欲しい、という感想があったとしても至極真っ当ではあると思う。

いずれにしてもボーカリストとしての魅力には間違いがなく、また少し違ったアプローチでの作品も聴いてみたいような気はする。

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