1991年のポップ・ソング・ベスト50

いまこれを書いている時点で2021年が明けてから数日が過ぎたぐらいなので、1991年は30年前である。という、当たり前のことを書いている。この年の途中でバブル景気は終わったといわれているが、一般大衆がそれをちゃんと認識するまでには、あともう少しの時間が必要だった気がする。

ジュリア東京がオープンし、カルピスウォーターがものすごく売れていた。マクドナルドが中華料理を売りはじめる(そして、間もなくやめる)のはこの年の12月のことだ。

という訳で、そんな1991年のポップ・ソングからベスト50を決めてしまおうじゃないかというのが今回の主旨だが、やはり個人的な趣味嗜好が大きく反映してしまったものになり、客観性はひじょうに欠いている。それでも続いていくのが人生なので、早速はじめていきたい。

50. Rosa/中山美穂

ラテンテイストで良い感じのダンス・ポップ。作詞の一咲は中山美穂のペンネームで元のタイトルは「チョットドウシタノ」。作曲の井上ヨシマサとはこの後に交際。

49. 調子悪くてあたりまえ/ビブラストーン

近田春夫が率いる人力ヒップホップ・バンドなどともいわれていたような気もするビブラストーンのアルバム「ENTROPY PRODUCTIONS」収録曲。タイトルはまったくその通りだが、加齢後のコロナ禍で聴くと感慨もまたひとしお。

48. 涙は悲しさだけで、出来てるんじゃない/ムーンライダーズ

アルバム「最後の晩餐」に収録(サブタイトルは「誰が最初に死ぬか?」の英訳だった)。「ぼくは君のアンダーウェア いつでも脱ぎ捨てるためにいる」という極北的なラヴ・ソング。

47. Happy/Ned’s Atomic Dustbin

なかなか振り返られることも少ない印象のパンク・バンドだが、久しぶりに聴いてみるとエネルギッシュでポップでかなり良かった。ボーカリストが片側の前髪だけをやたらと長く伸ばしていた。

46. Tasty Fish/The Other Two

ニュー・オーダーで人気が高いメンバーといえばバーナード・サムナーとピーター・フックだが、それ以外のメンバー2人、具体的にはスティーヴン・モリスンとジリアン・ギルバートが「その他2名」という自虐的なネーミングのユニットを結成。これがまたキュートでキャッチーなエレクトリック・ポップで最高。

45. ラブ・ストーリーは突然に/小田和正

「カンチ、セックスしよ!」で知られるテレビドラマ「東京ラブストーリー」の主題歌として大ヒット、オリコンシングルランキングで年間1位に輝いた。バブル景気は実質的に終わっていたが、それがまだ認識されていない時点のトレンディーなきらめきが切なく響く。

44. Where The Streets Have No Name (I Can’t Take My Eyes Off You)/Pet Shop Boys

ペット・ショップ・ボーイズがU2とボーイズタウン・ギャング(オリジナルはフランキー・ヴァリ)した曲で、軽快なダンス・ポップであることから当時のU2の生真面目さを茶化しているようにも見られがちだが、結果的にメロディーの良さが浮き彫りにされもしたのではないか。

43. Charly/The Prodigy

この頃にはまだキャラクターが立っていなくて、「BEAT UK」でよく観る匿名的なダンス・ユニットの一つというような認識だったのだが、ポップセンスの秀逸さはこの時点でもうすでにわりと知られていたのだろうか。

42. A Roller Skating Jam Named “Saturdays”/De La Soul

「デ・ラ・ソウル・イズ・デッド」はタイトルやジャケットの時点で前作からパワーダウンした感が否めないのだが実は結構良い、ということもかなり知られているのだろう。シカゴ「サタデー・イン・ザ・パーク」をサンプリング。

41. 星の彼方へ~Blue Shinin’Quick Star~/Flipper’s Guitar

最後のアルバム「ヘッド博士の世界塔」収録でシングル・カットもされた曲。「〜だろう」という語尾のフレーズや犬や猫が歌詞に出てくる。

40. What Do I Have to Do/Kylie Minogue

アイドル出身でメインストリームのポップスを一貫してやっているがクラブ・ミュージックなどのトレンドの適度なブレンド具合がかなり丁度いい。SexKylieなどとも呼ばれていた時代。

39. You Love Us/Manic Street Preachers

このご時世になんてアナクロなことをやっているのだと個人的には当時まったくピンと来ていなかったのだが、後に良さに気付いてこの曲も最高だと思えるようになった。

38. Apparently Nothin’/Young Disciples

アシッド・ジャズだとかジャズ・ファンクのようなものも当時はよく流行っていて、私はまったく関係が無かったのだがこの曲は結構気に入っていた。

37. Sit Down/James

フリッパーズ・ギターがイベントでみんなを座らせようと思ってかけたら余計に盛り上がった、でお馴染みのジェイムスの「シット・ダウン」である。ズンドコしたリズムが特徴。モリッシーのお気に入りバンドとしてもよく知られていた。

36. Planet Of Sound/Pixies

「世界を騙せ」という邦題がついたアルバムからの先行シングルでラウドでヘヴィー。

35. There’s No Other Way/Blur

インディー・ダンスのフォロワー的に思え、おそらく長くは続かないだろうとも感じたのだが、後に国民的人気バンドとなるブラーの最初のトップ10ヒット。ビデオで家族が食事をしているのに一人だけカメラに向かって歌っているデーモン・アルバーンが気になった。

34. Star Sign/Teenage Fanclub

周囲でものすごく人気があったものの初めはどこが良いのかよく分からなかったのだが、何度も聴いているうちにだんだん良くなって、気付けば大好きになっていたバンド。このバンドの良さが分かると同時に、ポップ・ミュージックの楽しみ方の深みが増したような気がした。シングルにはマドンナ「ライク・ア・ヴァージン」のカヴァーも収録。

33. Cream/Prince & The New Power Generation

アルバム「ダイヤモンズ&パールズ」からシングル・カットされ、久々の全米シングル・チャート1位を記録した曲。キュートでキャッチーでチャーミング。

32. Summertime/DJ Juzzy Jeff & The Fresh Prince

夏の気だるいムードが感じられるヒップホップ・チューン。いまやサマー・クラシックスの一つとして定着。

31. Gypsy Woman (She’s Homeless)/Crystal Waters

これもとにかくものすごく流行った。カルピスウォーターと同じぐらい流行ったのではないかという印象もあるが、おそらくそれほどでもない。が、あの夏のサウンドトラック的な1曲ではあるような気もする。

30. To Here Knows When/My Bloody Valentine

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのEPに収録された曲。まったくキャッチーではなくシングル向きでもないような気もするのだが、独自の耽美的なすごい世界に行って、アルバムは一体どうなるのだ、と思わせるのに十分であった。

29. Pearl/Chapterhouse

シューゲイザーというのは当時はちょっとイジっているような表現だったとは思うのだが、いまやすっかりサブジャンルとして定着した。その代表的なバンドによる代表曲である。

28. Movin’ On Up/Primal Scream

クラブ・ミュージック的なアプローチを見せていたプライマル・スクリームのアルバム1曲目に収録されていたのは、まさかのローリング・ストーンズ的なロックだったのだが、これもまた良いのではないかと思わせた当時の勢いである。

27. The Size Of A Cow/The Wonder Stuff

ブリットポップ以前のインディー・ロックファンにひじょうに人気があったワンダー・スタッフのビートルズ的な感覚を持つ全英トップ10ヒット。

26. I’m Too Sexy/Right Said Fred

ノヴェルティー・ソング的ではあるのだがポップに開かれていてとても良い。ヴァージン・レコーズに就職した大学時代の知人がこれのキャップを被って六本木WAVEに来るなどしていた。インディー・レーベルのヘヴンリーがマニック・ストリート・プリーチャーズ、フラワード・アップ、セイント・エティエンヌによるトリビュートCDをリリースしたりもしていた。

25. The Choise Is Yours/Black Sheep

とてもカッコいいヒップホップの曲。よく知らなかったのだが、詳しい知人から定期的におすすめを聞いていた。その中にも確かあったはずである。

24. Set Adrift On Memory Bliss/P.M. Dawn

スパンダー・バレエ「トゥルー」をサンプリングしている時点でなんとなく気に入っていたのだが、ピースフルな世界観にも好ましいものがある。

23. In Bloom/Nirvana

「ネヴァーマインド」から翌年にはシングル・カットもされる、ダイナミックでとても良い曲。

22. Papua New Guinea/The Future Sound Of London

フューチャー・サウンド・オブ・ロンドンというユニット名にそれほど感じるものもなく油断していると、実はヒップホップのわりと新しい可能性にもチャレンジしているのだと気付かされて驚くのだった。

21. Check The Rhime/A Tribe Called Quest

ジャズっぽいヒップホップでとてもカッコいい曲。

20. Bring The Noise/Anthrax featuring Chuck D

スラッシュメタル的なバンドと組んでパブリック・エナミーの人気曲をカヴァー。というニュースから想像するよりも遥かに優れた仕上がり。オルタナティヴな音楽ファンがメタル的なサウンドにもそれほど抵抗を示さなくなった頃を象徴しているようにも思える。

19. How I Could Just Kill A Man/Cypress Hill

ヒップホップなのだがオルタナティヴ・ロック的なサウンドやアティテュードも持つサイプレス・ヒルはいろいろちょうど良かったし、この曲などはいま聴いたとしても十分に刺激的である。

18. Lithium/Nirvana

ニルヴァーナのことをビートルズ・ミーツ・レッド・ツェッペリンなどと評する人もいたが、わりとそれに沿った音楽性を持つとても良い曲。

17. Get Off/Prince &The New Power Generation

1位になった「クリーム」よりも個人的にはこっちの方が好きだった。

16. Come As You Are/Nirvana

「ネヴァーマインド」から選びすぎ問題というのも明らかにここにして深刻化しているような気もするのだが、ポップで良い曲がこれでもかというぐらいに収録されているので仕方がない。

15. Nothing Can Stop Us/Saint Etienne

世間一般的な基準からするとおそらく過大評価しすぎなのかもしれないが、セイント・エティエンヌはかなり重要だと思うのである。コンテンポラリーなクラブ・ミュージックと60年代のクラシック・ポップとを融合させようとした試みは実に貴重なものである。そして、そのわりと優れた成果がこの曲なのではないかという気もしている。

14. The Fly/U2

ポスト・モダン的なアルバム「アクトゥン・ベイビー」でU2は十分にアップデートされたように思える。これがなかなか上手くいかなかったり、心底では変化を望んでいない人たちもいたりするのだが、それらには基本的に影響を受けていないところが、現時点ではひじょうに良いのではないかと思える。

13. 3AM Eternal (Live At The S.S.L.)/The KLF

スタジアム・ハウスなどとも呼ばれた新しいスタイルで全英シングル・チャートでのヒットを連発した。他にもヒットを連発するのだが、翌年のブリット・アワーズで会場近くに羊の死体を置いて、そもまま引退という流れであった。

12. O.P.P./Naughty By Nature

ポップでキャッチーなヒップホップ。まさに当時を象徴するポップ・ソングの音という印象がある。

11. Justified & Ancient/The KLF

大ヒット連発で大活躍の年のフィナーレは、カントリー歌手のタミー・ワイネットを起用したこのダイナミックなヴァージョンである。

10. Scenario/A Tribe Called Quest

ネイティヴ・タンというコンシャスなラップをやるサークル的なものの中から飛び出した、トライブ・コールド・クエストのアルバムからシングル・カットされた、とてもカッコいい曲。

9. GROOVE TUBE/FLIPPER’S GUITAR

FLIPPER’S GUITARAはもちろん革命だった訳だが、海外のアーティスト達の動きともリンクする部分が多かった印象もある。この流れは、今後ますます仕事が出来るコアなグループに受け入れが可能となっております。

8. Get The Message/Electronic

ニュー・オーダーのバーナード・サムナーと元ザ・スミスのジョニー・マーによるスーパーユニットの、全英トップ10ヒット。テクノロジーとアコースティックとのバランスが絶妙で、とても風通しの良いポップスになっている。

7. Mind Playing Tricks On Me/Geto Boys

いろいろスキャンダラスな話題が先行しがちでもあったゲトー・ボーイズだが、音楽的にひじょうに先駆的でもあったことがとても良く分かる。

6. The Concept/Teenage Fanclub

サウンドがいかに新しいかだけではなく、曲そのものが良いのかどうか、自分に何かを感じさせてくれるかこそが重要なのだという、きわめて当たり前だが忘れかけていたことに気付かせてくれたのがティーンエイジ・ファンクラブの「バンドワゴネスク」であり、特に1曲目に収録されたこの曲が素晴らしい。

5. Unfinished Sympathy/Massive Attack

湾岸戦争で「ATTACK」という単語が相応しくなく、「MASSIVE」を名乗らざるを得なかった時期を経て、アルバム「ブルー・ラインズ」はエクレクティックな素晴らしい作品。特にこの曲ではサウンドの新しさとヴォーカルの強度とが高いレベルで拮抗しているようにも思える。

4. Losing My Religion/R.E.M.

オルタナティヴだがメインストリームでも売れた先駆的なバンドが、R.E.M.である。宗教的モチーフをも用い、愛ゆえに満たされない心について歌われているように思えるこの曲はまさに大人のロックと呼べるのではないだろうか。

3. Only Shallow/My Bloody Valentine

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのアルバム「ラヴレス」の1曲目の収録された曲である。アルバムの制作には当時、レーベルを倒産させかねないほどの費用がかかったということである。ノイジーでありながら耽美的というオリジナリティー溢れる音楽性を発明したことは大いに賞賛されるべきであろう。

2. Higher Than The Sun/Primal Scream

インディー・ロック・バンド、プライマル・スクリームは次第にクラブ・ミュージックに傾倒していき、この曲ではアンビエント・ハウス・ユニット、ジ・オーブとコラボレートすることにより、ポップ・ミュージックの可能性を拡張しているともいえる。

  1. Smells Like Teen Spirit/Nirvana

あまりにも無難な結果だが、やはり1位はこれ以外に無い。ラウドでヘヴィーでノイジーなアメリカン・インディー・ロックは注目を集めてはいたが、けしてメインストリームでマイケル・ジャクソンやガンズ・アンド・ローゼズやU2などに対抗する存在ではなかったはずなのだ。しかし、実際にそうなってしまった。ソングライティングや演奏、ヴォーカル、プロモーションなど、ヒットの要因となるものはいろいろあったのかもしれない。とはいえ、この曲及びアルバム「ネヴァーマインド」の大ヒットにより、オルタナティヴ・ロック的なものが全米シングル・チャートの上位に時には入っているような状況である。その後のポップ・シーンにおいて、オルタナティヴ・ロックはよりメジャーでも評価がされやすくなったのだが、この年や翌年のニルヴァーナが果たした役割はひじょうに大きかったと言わざるをえない。この曲はまさに、時代が変わる音でもあった。

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