The KLFがYouTubeチャンネル開設とストリーミングサービスで楽曲を配信開始

ビル・ドラモンドとジミー・コーティからなるエレクトロニック・ミュージック・ユニット、The KLFがYouTubeチャンネルを開設し、コンピレーション・アルバム「Solid State Logik 1」のストリーミングサービスでの配信を開始した。

これはちょっとした事件でもある。なぜなら、The KLFは今から29年前、ブリット・アワーズ受賞後に羊の死体を会場に放置し、音楽業界からの引退を発表すると同時に、過去のすべての作品を廃盤にしていたからだ。

1991年はポップ・ミュージック史上、ひじょうに重要なアルバムがいくつもリリースされた年だが、ヒット・チャートでの成功の規模でいうと全英シングル・チャートで「3AM Eternal (Live at the S.S.L.)」が1位、「Last Train to Trancentral (Live from the Lost Continent)」と「Justified and Ancient (Stand by The JAMs)」が2位、「America: What Time is Love?」が4位、アルバム「The White Room」が3位を記録したThe KLFの勢いがすごかったのではないだろうか。

「The White Room」がリリースされたのは、日本でFlipper’s Guitarがシングル「GROOVE TUBE」をリリースしたのと同じ1991年3月のことだった(この前月には電気グルーヴがTMN VS 電気グルーヴ名義でメジャーデビューを果たしている)。

日曜日に六本木に遊びに行くと、六本木WAVEの1階に「The White Room」が大量に陳列されていたのを覚えている。あまりにすごそうだったので、よく分からないのだがとりあえず買っておいた。青山ブックセンターで買った「THE FACE」の表紙はアニメ「ザ・シンプソンズ」のバート・シンプソンだった。

今回、配信が開始された「Solid State Logik 1」にはこれら1991年のヒット・シングルがすべて収録されている。それ以外にはThe Timelords名義で全英シングル・チャート1位に輝き、その体験を綴った「The Manual (How to Have a Number One the Easy Way)を書くきっかけにもなったノベルティー・ソング「Doctorin’ the Tardis」や「3AM Eternal」のエクストリーム・ノイズ・テラーをフィーチャーしたヴァージョンなどを収録している。

音楽性を一言でいうならばスタジアム・ハウス、エレクトロニック・ダンス・ミュージックでライヴの歓声なども入っているが、それらはU2のライヴ・アルバムなどから拝借されたものだという。

The KLFというユニット名の由来については諸説あるのだが、その一つが「Kopyright Liberation Front」、つまり「著作権解放戦線」の略なのではないかというものである。

80年代にビッグ・イン・ジャパンというバンドのメンバーとして活動した後、大手レコード会社に勤務していたビル・ドラモンドは33歳を迎えていた1986年にヒップホップ音楽をつくらなければいけないと思い立ったが、テクノロジーについての知識がなかったため、一人でやるのは難しいだろうと思い、レコード会社勤務時代に契約をしたバンドのメンバーで音楽の趣味も似ていたジミー・コーティを誘ったのだという。

The Justified Ancients of Mu Mu、略してJAMsを名乗っていた活動初期においては、ブレイクビーツにメジャーなレコードから無断でサンプリングしたような曲をリリースしていた。デビュー・シングルの「All You Need Is Love」ではビートルズやサマンサ・フォックスとエイズの公共広告、アルバム「1987 (What the Fuck Is Going On?)」に収録された「The Queen and I」ではABBAといった具合である。当然のようにクレームが付くので発売を中止したり、サンプリング部分を消して再リリースしたらほとんど無音だったりというようなこともあった。

このようにして始まったユニットが、5年後にはヒット曲を連発し、ブリット・アワーズまで受賞してしまったというのだからすごいことである。そして、売れたら売れたで気に入らず、問題行動を起こして引退である。その後も当時の作品の売り上げで入った高額の紙幣を燃やしたり、人の遺灰を含んだ煉瓦でピラミッドを造ろうというプロジェクトを立ち上げたりといろいろなことをやっている。そして、何やら「23」という数字にものすごくこだわりがあるようである。

今回もサプライズでのこの動きだが、今年は他にもリリースが続くともいわれているようだ。ポップ・ミュージックも歴史が長く、何十周年記念という企画が目立つようになった。日本ではカルピスウォーターが空前の大ヒットを記録した1991年はまた、The KLFが売れまくった年でもあった。それから30周年を迎えるこのタイミングでのこれには、何やら胸さわぎを覚えなくもない。

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